勝ち組と負け組がはっきりとするのに,時間を必要としない。この業界では,ひとつの失敗が,わずか数ヶ月の時が,「生」と「死」をわける。そして死すべきものには,別れの言葉も与えられない。かつて,革命を打ち立てし者の上に徒花が咲く。
3Dグラフィックチップ「ブードゥー(Voodoo)」を生産していた3dfx社は,資産の大半をライバルのヌビディア社に売却して,解散することになった。ブードゥーはかつてない性能のチップとして登場し,業界を革新したが,STBシステム社買収によるグラフィックボード市場参入という経営判断の失敗で,ヌビディアやATIテクノロジーズ社に差を開けられた。ブードゥーはリテール市場では今も売れ筋だ。
ブードゥー2が世に出たのが97年だった。そうか,まだ3年しか経っていないのかと思い返す。ブードゥー2はグラフィックチップの爆薬となり,価値観を一変させ,市場を作ったと云ってもいい。ただその爆薬の衝撃の大きさは,自らも傷つけた。グラフィックボード市場への参入という大いなる失敗もあり,ライバルであるヌビディアに圧倒的に差を付けられ,ATIにさえも後塵を拝することになる。だが,それとて,ここ1年の話だ。そして,コアテクノロジーとともに,「3dfx」「ブードゥー」という名前(意匠権と使用権)さえも,ヌビディアに買い叩かれた。ヌビディアがブードゥーブランドを使うということは,あまり考えられないので,勝ち組と負け組を明確にするためのヌビディアの非情なまでの処置ともいえる。
OEM向け市場を持たず,個人向けリテール製品のみで生きてきた3dfxにとって,昨今のPC業界全体の低迷も最期の痛手となった。その点では,アップルを始めとする昨今の業績見直しをしている企業ともリンクする。そして日本でも,ビデオカードやCPUアップグレードカードを出していたインタウェア社が倒産というのが伝えられた(MacWIRE ONLINEの記事)。マックユーザーにとっては大きな痛手だ。3dfxもインタウェアも,ともに製品は市場にあり,実際にはその開発元がもうこの世にないというのが,不思議な感覚だ。…非情だなぁと,冬の風の中で思うのでした。
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